ひゅ〜〜〜…どぱぁんっ!!



ずどどどど…どんっどんっどんっ!!



 季節外れの花火が上がっている。
 気が付くと、いつの間にか俺は祝賀会か何かの会場の中に居た。

「…なんだここ?」

 きょろきょろと周囲を見渡すと、大量の人人人…。
 皆本さんや局長、柏木さんを初めとしたバベルのみんなも参加している。
 各々ジュースやアルコールなどのグラスを持って談笑している。

「初音は…あそこか…」

 2つほどテーブルを挟んだところに、ものすごい勢いで食べ物を喰らう初音の姿が見える。
 このパーティ(?)はバイキング制らしく、テーブルの上に料理がまとめて置いてあった。
 初音が参加することを考慮して、局長か皆本さんが用意してくれたのかも知れない。

「あれは…!」

 視界の隅に異色の集団を見つける。
 それは銀髪の学ランの男とその肩に乗っているモモンガ、そして金髪の少女とハードゲイなオカマ。
 敵対しているはずの奴らが何故ここに…?

「み、皆本さんっ!
 あそこにパンドラの奴らがっ!」

「ん?
 ああ、いいんだよ」

「へ?」

 パンドラの面々を眺めてさらりと言う皆本さん。
 何がなんだかさっぱりわからない。

「今日はお祝いだからね」

「…お祝い?」

「そうだよ。
 ほら、あそこを見てごらん」

「え?」

 皆本さんが指差した方向を見ると、人だかりが出来ていた。

「あの真ん中に居るのが、今日の主役だよ」

 そう言われて人だかりに視線を向けると、黒っぽい鳥のような生物が真ん中に存在した。

「鳥…?」

 目をこすり、もっとよく見ようと目に力を入れると、周りの人たちが拍手を送り始めた。



「おめでとう」


「おめでとう!」


「おめでとさん」


「おめでとう」


「めでたいことだネ!」


「おめでとうございます」


「おめでとー」


「おめっとさん!」


「おめでとうございます」


「おめでとうございます」


「おめでとうっ」


「オメデトサンネー!」


「オメデトーゥゴザイマァース!」


「おめでとう」


『オメデトサン』


「おめでとうんっ♪」


「ふ、ふんっ…お、おめでとう…」



 皆本さんから始まり、薫ちゃん、葵ちゃん、紫穂ちゃん、局長、柏木さん、管理官、賢木先生、ナオミさん、野分さん、常盤さん、ケンさん、メアリーさん。
 それだけでなく、兵部、桃太郎、マッスル大鎌、澪からも祝福を受けている。
 一体全体、あの中心に居るのは一体何者なんだ…。

「み、皆本さん、あそこには誰が…ってあれ?」

 おかしい。
 ここに皆本さんは居る。
 しかし、あそこにも皆本さんが居る。
 パンドラの奴らもさっきの場所にも居る…。
 よくよく見れば、このパーティの参加者はさっきの祝福してる人たちだけだ。
 その人たちが複数いるから大量の人が居るように見えるだけで…。
 一体何がどうなって…。



「明〜」



 混乱する俺の背後から、普段通りの初音の声が聞こえてくる。

「これ美味しいよ、明も喰べなよ」

 気に入った料理があったのだろう、皿に料理を載せて俺に見せて来た。

「よかった、お前だけはいつも通りだな…」

 見渡しても1人しか居ない初音を見て、ほっと息をつく。

「?
 何が?」

「いや、俺とお前以外のみんな、何人も居るだろう?」

「?
 それだけ出たんだから当然でしょ?」

「…は?」

 何をわけの判らないことを言うんだこいつは?

「明が1人だけなのは、明が最後に出たからだよ」

「…え?」

「他の人たちは何種類もあるからいっぱい居るの」

「………え〜っと…」

「20パック以上買ったから、同じの何枚も出るのは当然だよね〜」

「………」

 つまりだ…。

「出たカードのキャラの分だけ、ここに人が居るってことか?」

「うん」

「…またやっかいなネタを…」

 小ネタとは言え、頭が痛くなるようなことをよくもまぁ考える…。

「あ、でも明」

「ん?」

「初音も1人じゃないよ?」

「…え゛?」

「ほら」

 初音が指差す方を見ると、先ほどの初音同様にテーブルの料理を喰らい続けているもう1人の初音が居た。
 俺の視線に気付いたのか、食事をする手を止めてこちらに手を振ってくる。

「未来の姐さんなんか3枚も出てるのに、それよりもレア度の低い初音が2枚、明が1枚って比率はおかしいよねぇ」

「な…な…」

「と言うわけで、明日から『2人分のゴハン』よろしくね♪」

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!???!?」






「………!?」

 掛け布団を跳ね上げて起き上がると、そこは俺の部屋だった。

「…なんだ、夢か…」

 どうやらさっきのは夢の中の出来事だったらしい。
 当然だ、あんなことが現実に起きてたまるか…。

「…ったく、夢オチなんてお約束なことを…っと…」

 ベッドから降りようとした俺の手が、がっしりと掴まれている。
 こんなことをするのは1人しか居ない。

「やれやれ…。
 初音、俺の布団にもぐりこむのは止めろとあれほど…」

 がばっ…と、掛け布団を捲ると予想通り初音がすやすやと眠っていた。
 しかし、予想と違った部分が1つある。
 それは…



 初音が2人居たことだった…。



(終われ)


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