夕食が終わったあとの犬神・宿木家。
その中の一室である明の部屋では、この家の住人である明と初音が向かい合った状態で勉強をしていた。
カリカリカリカリ…
「ねぇねぇ明、ここは?」
「ん〜?
ああ、ここは…こうだろ」
初音の質問に、明は初音のノートへ公式を書いて教える。
「あ、そっか」
明の書いた公式に数字を当て嵌め、カリカリと続けて解いていく初音。
明はそれを確認し、自分のノートへと視線を戻す。
しばらくすると、2人の間にカリカリとシャープペンシルを走らせる音だけが流れていく。
初音の高校入試対策として始まった勉強会だったが、今では宿題や予習、復習を行う時間として日課になっていた。
「う〜…」
数分後、ガリガリと頭を掻きながら初音が唸りだした。
「なんだ、今度は何処がわからないんだ?」
「ここ…」
「ん〜?
ああ、これは公式を2つ使うから…」
向かい合った状態では説明は難しいと判断したのか、明は初音の隣りへと移動した。
「最初にここをこの公式で解いてだな…」
「うん」
「次に…」
ふわん…
「うっ…」
初音の前に置かれているノートに横からシャープペンシルを差し出した為、明の目の前に初音の髪が少し触れる。
既に入浴を済ませていた為に、ほのかなシャンプーの匂いが明の鼻腔をくすぐった。
「…明?」
「あ、ああ…。
悪い、ボーっとしてた」
「大丈夫?」
とさり…と、明に寄りかかりながら心配そうに見上げる初音。
身体の密着した場所からお互いの心音が伝わって来る。
「…本当に…大丈夫…?」
なにやら意味ありげに言う初音。
「…お前…わざとやってるだろ…」
ジト目で言う明。
「…なんのこと?
あ、ちなみに宿題はもう終わってるよ。
今やってるのは予習だから、必ずやらなきゃいけないわけじゃないよ?」
「…ったく、最終的にはこうなるのか…」
そう言いながらも、嫌そうにはしていない明。
そのまま初音を包み込むように抱きしめる。
「明日こそはちゃんと予習するからな…」
「それ、昨日も言ったよ…」
「…そうだったな…」
初音の言葉に照れつつ、明は初音に覆い被さって2人の影は1つになっていく。
そして…

「……ってな感じの『夜の勉強会』の結果が今の初音なんだなっ!!
頭も良くなるし、胸もでっかくなるしっ!一石二鳥っ!!」
ムッハァッ!と、オヤジ顔で力強く叫ぶ薫。
「阿呆ぉぉぉぉぉ!!
そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁ!!
盛大に卑猥な妄想を熱く語ってるんじゃないっ!!
明くんも初音くんも黙ってないで、こいつに反論を…」
そう言いながら明と初音へ目をやる皆本。
「………」
「………」
しかし、明と初音は顔を紅くしながら視線を泳がせていた。
「………まさか…」
予想外の反応に言葉の詰まる皆本。
「い、いや、毎回ってわけじゃないですよっ!?
た、たまにそんな感じにもなったりするとかしないとかっ…」
「う、うんっ。
そう言うときはちゃんと事前に…」
「ちょっ…そっから先は言うんじゃないっ!」
思いっきり動揺しながら、否定になっていない否定をする2人。
そんな2人をニヤニヤしながら見る薫と、頭を抱えながら落ち込む皆本であった。
(終われ)
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