「明くん、ちょっといいかな」

 訓練も終わり、帰ろうとしていた明に皆本が声をかける。

「はい?なんですか?」

「こんなことを聞くのもアレなんだけど…。
 …明くんは浴衣の着付けとかって出来るかい?」

 何処か申し訳無さそうに聞く皆本。

「えぇ、出来ますよ。
 あぁ、そう言えば来週は夏祭りでしたっけ」

 バベル主催…と言うか、管理官の鶴の一声で開催が決定した夏祭りのことを思い出して明は言う。

「良かった、すまないけど教えて貰ってもいいかな?
 多分、あいつらが『着たい!』って言うと思うからさ」

 あいつらとは、同居している3人の少女のことであろう。

「いいですよ。
 俺も本番前に思い出しておこうと思ってましたし」

「悪いね。
 じゃあ明日にでも…」

「よぉ〜何の話だ〜?」

 通りかかった賢木が2人に声をかけてくる。

「あぁ、来週夏祭りだから明くんに着付けを習おうと思って」

「着付け?
 なんだよ、俺が教えてやるぞ?」

 皆本の答えに賢木が言う。

「…出来るのか、着付け…」

「意外ですね〜…」

 2人は疑い半分の視線を賢木に向けた。

「なんだよ、俺が着付けできたら駄目なのか」

 心外だなぁ、と言った風に言う賢木。

「いや、お前が自分から着付けを習うとは思えなくてな」

「ですよね〜」


「何言ってんだよ、脱いだら着ないといけないだろ。
 それに、脱ぐ前と同じになってないとばれるから何種類も覚えてないと大変なことに…っておい、聞いてるのか?」


「あんな不埒な理由で覚えた馬鹿はほっとくのが一番だ、さっさと帰ろうか」

「そうですね」

「ああ言う大人になっちゃ駄目だからね」

「肝に銘じます」

 スタスタと、賢木を置いたまま2人はその場を立ち去っていった。




(終われ)


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