シボッ…



「………ふぅ…」

 目的地に到着して一服する。
 俺の名前は『GI3(ジーアイスリー)』。



 もちろん本名ではない、通称である。
 職業はスナイパー…つまり殺し屋だ。
 依頼さえあれば政治家だろうと大統領だろうと、たとえ女子供であろうとも狙撃する。
 そう、俺はプロフェッショナルなのだ。
 仕事に私情は持ち込まず、感傷も同情もしない。
 『殺人機械(キリングマシーン)』なのだっ!!



 …っと、話がそれたな…。
 俺がここに居る理由、それは証拠品を破壊する為だ。
 先日依頼された仕事を行っている際、不慮の事故で狙撃用のライフルを現場に残してしまったのだ。
 あれがもしサイコメトラーに読まれてしまった場合、俺の仕事に差し支えが出てしまう。
 そうなる前に破壊をしなければならない。
 そのために俺は今、警視庁の証拠品保管室を狙っているのだ。
 だが、今のままではあの部屋のどこにライフルが保管されているのかがわからない。
 そのために、署員がライフルを出す瞬間を待っている。



 …来たようだな…。
 10分ほどして室内に入る人影を確認した。
 男が2人、子供が3人…なるほど、さっそくサイコメトリーをさせるつもりか…。



 しかし、そうはさせん。
 このスコープの視界内に入った瞬間、グレネードで部屋もろとも破壊してやる。



 薄い紫色の髪の少女がライフルを抱えて来た。
 かわいそうだがこれも運命、恨むなよ。
 俺が引き鉄に指を触れた瞬間…



 少女の持つライフルが火を噴いていた…。



チュインッ!!!



 俺のほほのそばを、何かがかすめて行く。
 とっさの事に、俺は微動だに出来なかった。
 動けない俺が見たものは、こちらを見て妖しく笑う少女…。



 …この仕事引退しよう…。



 あまりの恐ろしさに階段を駆け下りながら、俺は心に誓った。



(了)


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