『桜の下には死体が埋まっている』



 妖しいまでに咲き乱れている桜の樹の下で、勘九朗はそんな言葉を思い出していた。

「埋まっているモノの養分を吸って奇麗に咲く…あながち間違ってないのよね。
 ただ…埋まっているのは死体じゃないけれど…」

 一流のゴーストスイーパーでならばわかるであろう、微弱な妖気を帯びている桜を眺めて呟いた。
 白龍会の持つ土地の一角に、その桜は存在した。



ガリッ…ガリゴリガリゴリィッ…!!



 桜の樹の根元から、地面を削るような音が聞こえてくる。
 それはまるでナニカが地下から這い出してくるような…。



ボゴォッ!!



 しばらくして、勢い良く地面から腕が生えてきた。

「…目覚めたようね」

 驚いた様子も無く勘九朗が呟く。
 腕は少しずつ穴を広げ、十分な大きさを作り出して一気に地上へと這いずり出てくる…。
 勘九朗は這いずり出てきたモノを確認し、口を開く…。






「おはようございますメドーサさま、良く眠れました?
 今年もメドーサさまが冬眠中に出した、『よだれ』やら『何やら』を吸って桜が奇麗に咲きま…あいたー!?」



(了)


戻る