「暖かくなって来たなぁ…もう春なんだなぁ…」
ぽかぽか陽気の空の下、横島は事務所へと続く道を歩いていた。
「そしてあと4ヶ月もすれば夏っ!薄着のねーちゃんたちが大量に…!!!」
妄想に思いをはせて叫ぶ横島。
周りの人々は、そんな横島を遠目に見ている。
「…なに馬鹿な叫びしてんのよ…」
背後から聞きなれた声が聞こえて来た。
「おわっ…って…なんだ、タマモか…お前も事務所に戻るのか?」
横島が振り向くと、呆れた顔つきのタマモが立っていた。
「そーよ」
「んじゃ一緒に行くか?」
「嫌よ、変態の仲間に思われたくないわ」
すっぱりと横島の提案を斬り捨てて、横島を置いて行くタマモ。
「変態って…」
ひでぇなぁ…と思いつつタマモを追う横島。
ちょうど横島がタマモの数メートル後ろまで来た瞬間…
びゅおぉぉぉ〜〜〜!!!
辺り一面に突風が吹き荒れる。
この時期特有の『春一番』であった。
「…………見た?」
とっさにスカートの前を抑えたが、後ろまでは抑えれなかったタマモ。
真後ろに居た横島を睨みながらそう聞いた。
「い、いやいやいやいや…!ナニも見てないぞ!」
首を高速で左右に振りながら横島が言う。
「…そう…」
横島の答えに納得したのか、前を振り向き直して歩き始める。
「(ほっ…)」
心の中で溜め息をついて、今度はタマモの横を歩く横島。
「…ところで、今日のは似合ってた?」
「そうだなぁ、俺としてはもうちょっと大人っぽいのを……はっ!?」
シパーンシパーン!!
ゴォォォォォ!!!
「火ぃぃぃぃぃ〜〜〜〜!!」
「ふんっ…!!」
タマモが立ち去った後には、顔に半年は早い紅葉を付けて焼かれた横島の消し炭が残されていた…。
(了)
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